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東京高等裁判所 昭和52年(ネ)465号・昭52年(ネ)459号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

二そこで、第一審原告の賃料増額の意思表示の効果について判断する。

1 <証拠>を総合すると、本件建物のうち第一審被告らの賃借部分の賃料(以下、「本件賃料」という。)のうち昭和五〇年四月当時のそれが、同建物の四階及び五階の賃借人の賃料や近隣のそれと比較して、かなり低額であること、また、右当時の諸物価がその一年前のそれよりも高騰していることは、公知の事実であり、右認定を左右するに足りる証拠はない。そうすると、本件賃料が改定される必要のあることは明らかである。

2 そこで、適正賃料額について検討する。

<証拠>を総合すると、次のような事実を認めることができる。すなわち、

(一) 本件建物は、国電「有楽町」駅の南方約四〇〇メートルの地点で、わが国屈指の繁華街である銀座広域商業圏のうち、いわゆる西銀座五丁目地区の一角、通称西五番街通り沿いに位置し、この地域は高級老舗店舗が大部分で、そのネームバリューは高く、都心・山手地区の住民の利用が多い。

(二) 本件建物は、昭和七年ころに築造されたもので、第一審被告らは、昭和二一年二月二九日、第一審原告(当時の商号・合名会社槌田商会)から右建物のうち地階五坪四合、一階一八坪、二階一三坪五合を借り受けたが、その際、戦災にあつた本件建物の復旧・改修にかなり高額の出捐をした(<証拠判断略>)。

(三) 第一審被告らは、右賃借部分で飲食店等を営んできたが、第一審原告と第一審被告らとの間には右賃借権をめぐつて時折り紛争が生じ、昭和二四年六月二八日と昭和三五年九月一三日の二度にわたり、裁判上の和解によつて賃料額が定められた。

(四) 第一審被告らは、昭和三九年六月一九日、新たに本件建物のうち二階の一部と三階の一部を借り増し、現在賃借している部分全体が賃貸借の対象となつたが、その際、当事者間の合意により賃料が一か月二〇万円と定められ、また、保証金として一一〇〇万円が第一審被告らから第一審原告に授受された。

(五) その後も第一審原告と第一審被告らの合意によつて賃料額の改定が行われ、昭和四六年四月以降一か月二四万三〇〇〇円、同四七年四月以降一か月二五万円、同四八年四月以降一か月二六万円、同年八月以降一か月二八万円、同四九年四月以降一か月三四万円にそれぞれ増額された。

(六) 本件建物は、地下一階、地上五階の鉄筋コンクリート造りであるが、戦前に築造された建物であるため、建物自体にエレベーターや冷暖房設備等が備わつてはいないが、前示の地域的特性とあいまつて、一・二階部分の効用が他の階層に比して著しく大きい。

以上の事実が認められる。

ところで、前掲鑑定人田坂勇の鑑定結果によると、本件建物の昭和五三年一二月一〇日の時点における、本件建物及び敷地借地権の各基礎価格に期待利廻りを乗じ、これに賃貸借を継続するのに必要な公租公課等の諸経費を加算する、いわゆる積算方式により得られる正常実質賃料は月額一五三万四〇〇〇円であり、これと保証金及び敷金の運用益を考慮した実際実質賃料四〇万四〇〇〇円との差額一一三万円の三分の一の相当額を貸主帰属部分として、これを右実質賃料に加えた継続実質賃料が月額七八万一〇〇〇円であること、また、本件建物の近隣地域及び同一需給圏内類似地域における賃貸借事例の賃料額を参考にして勘案するいわゆる賃貸借事例比較法による昭和五三年一二月一〇日の時点における本件賃料は月額七六万八〇〇〇円であること、右二方法による額と、本件建物の個別性を対比勘案し、更に保証金及び敷金の運用益を控除した、昭和五三年一二月一〇日の時点での継続賃料は月額七一万七〇〇〇円であること、これに逆スライド方式を適用した変動率を乗じ、更に保証金及び敷金運用益を控除した昭和五〇年四月一〇日の時点における適正賃料額は月額五一万五〇〇〇円とするのが相当であるとしていることが認められる。そして、右鑑定結果は、その採用した算定方法に合理性があり、先に認定した諸事実及び近隣の同種賃貸借事例における賃料額と対比して相当であると認められる。<証拠判断略>

したがつて、第一審被告らの賃借部分の適正賃料は、昭和五〇年四月一〇日以降月額五一万五〇〇〇円であり、第一審原告の第一審被告らに対する同日到達の増額の意思表示により、第一審原告の主張する同日以降同額に増額されたものと認められる。

(杉山克彦 三井哲夫 井田友吉)

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